戦略とは

戦略を言葉通りに解釈すれば「戦いの概略」あるいは「戦いの計略」である。経営における戦略についても、経営を一種の戦いと捉えればそのままの意味で通用する。

「戦略とは何か」について多くの書籍で目にする言葉は「基本設計図」である。組織であればそれは「組織活動の基本設計図」であるといえる。基本設計図は骨組みなどの全体像を大枠で捉えるもので、細かな行動を記述するものではない。ただし、戦略には行動するための方向性が含まれていなければ実行に移すことができなくなってしまう。「戦い」という言葉が受け入れられない場合は「行動の概略」あるいは「活動の概略」としても本質は変わらないと思う。

一般的な戦略の定義は「目標や目的を達成するための変革のシナリオ」である。つまり、戦略とは過程を示すものであり、目標を設定しただけでは戦略とはならないのである。多くの経営学者がこの点について指摘しており「多くの人は目標を設定しただけで、戦略を決定したと勘違いしている」「戦略と目標をとり違えている」としている。戦略における目標は戦略目標と呼ばれ、戦略とは別物なのである。

戦略の構造

リチャード・P・ルメルトは自著(良い戦略、悪い戦略)の中で『良い戦略は、十分な根拠に立脚したしっかりした基本構造を持っており、一貫した行動に直結する』としており、この基本構造を「カーネル(核)」と呼んでいる。カーネルは「診断」「基本方針」「行動」の3つの要素で構成されている。

ルメルトは同書の中でカーネルの説明としていくつか例を挙げているが、医師の例がとてもわかりやすかったので引用したい。

『医師にとって解決すべき問題は、病気の兆候あるいは症状を示し、既往症を持つ患者そのものである。医師は診断を行い、病名をつける。次に治療法を決める。これは基本方針に相当する。そして、治療法に基づいて食餌療法、投薬など一連の行動を調整し、治療を目指す』

まとめると各要素は次のようになる。

私見ではあるが、このルメルトの考え方は非常に強力で、組織レベルから個人レベルまで広範囲に適用できる。また、ビジネスだけではなく、個人の生活のすべてに当てはめることもできる。

戦略と戦術

戦略論では戦略と戦術という2つの言葉がよく使われる。戦術とは、戦略を実行するための細かな活動計画であり、戦略の下位概念である。先の医師の例を使えば、どの食餌療法を用いるか、どの薬を与えるかといった「行動」に当たる部分が戦術である。

ただし、戦略と戦術の区別には絶対的な指標というものはなく、戦略と戦術の関係性による相対的なものである。経営者の視点で見ると、企業全体の基本設計図は戦略となるが、部門ごとの基本設計図は戦略を実行するための戦術となる。しかし、部門の長から見れば部門ごとの基本設計図は戦略である。つまり、視点の違いによって戦略か戦術かは変わるのである。

一見すると言葉遊びのように感じられるかもしれないが、意外にも重要な事なのである。これも多くの書籍で見られるものであるが「戦術ばかりで、企業全体あるいは事業全体の戦略がない企業が多すぎる」のである。これは戦略と戦術の違いを理解していないことが要因のひとつではあるが、先に示したように戦略と目標の違いを理解していないことが主な原因であると考えられる。目標と戦術だけで戦っており、組織として一貫した行動がとられていないのである。

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