3つの基本戦略

営利企業が事業を存続させ発展させるためには利益を出さなければならない。利益は収益からコスト(費用)を差し引いたものなので、利益を増やすには収益を増やすかコストを減らすという2つの方法しかないことがわかる。経営戦略を立てるときの最終的な目的はこの2つのどちらかあるいは両方を満たすものでなければならない。

収益は「単価×販売数量」であるため、収益を増やすには単価を上げるか販売数量を増やすしかない。製品やサービスに何の変化もないのに単価を上げれば顧客は納得しないであろうし、競合他社に顧客を奪われてしまい販売数量の極端な減少につながる可能性があるため、単純に単価を上げるという方法は現実的ではない。競争市場においては、多機能や高性能、高品質などの差別化があれば、販売数量が少なくても十分な収益を得ることができる。逆に販売数量を増やすには単価を下げれば良いことになるが、コストとのバランスが重要になる。機能を限定する、性能や品質を下げるなどコストを抑えて低価格を実現できる。

利益を増やすためのもう一つの要素となるのが今でてきたコストで、単純にコストを減らせば利益は増える。コストを減らす方法については「低コスト化」のページで示すが、コストを減らす目的は低価格を実現させるためではなく利益を増やすためである。もちろん低価格によって販売数量が増え収益が増えることもあるが、それは業界の構造によるので、必ずしも「低価格=高収益」とはならないし、価格競争は業界内の企業にメリットをもたらさない。

上記をまとめると企業がとるべき戦略の大まかな方向性は、製品やサービスを差別化することと、コストを下げることである。

前置きが長くなってしまったが、マイケル・ポーターは競争における戦略として「3つの基本戦略」を挙げている。

コストのリーダーシップとは、同様の製品やサービスを競合他社よりも低コストで提供できるということである。競合他社よりも低コストであれば、販売価格が同じ場合でも高い利益が得られたり、他の競争要因が現れても柔軟に対応することができる。

差別化とは、業界の中で自社の製品やサービスに何らかの違いを出す方法である。差別化には製品の機能や性能の差別化やブランドイメージの差別化、顧客サービスの差別化などさまざまな形が存在する。差別化戦略が成功すれば直接のライバルがいなくなるため顧客の価格の敏感性が弱くなり、他社よりも高い利益を実現できる。

集中戦略とは、顧客グループや製品の種類あるいは販売地域などでターゲットを絞り込んで、そこに経営資源を集中させる方法である。コストのリーダーシップと差別化の戦略は業界全体にわたる幅広い顧客層を対象としているのに対し、集中戦略は業界内の特定のセグメントだけを対象とする。経営資源の少ない企業が大企業と対等にわたり合うことができる戦略であり、また大企業が参入することができないようなニッチな市場を築くこともできる。

基本戦略を組み合わせる

集中戦略は他の2つの戦略と組み合わせて使用することができ、特定のセグメントだけに集中することによって、低コストや差別化が行いやすくなったり、結果的に2つを同時に達成できることもある。

しかし、コストのリーダーシップと差別化の戦略は、求められる組織構造やマネジメントシステムが相反するものであるため、同時に追求しようとするとどちらも中途半端になってしまう。差別化戦略を実行したとき一時的に他社よりも低コストを実現できることもあるが、持続的に行わなければ優位性を失ってしまうため、長期的に見れば同時追求は成立しないのである。低コストと差別化の両方を達成するためには、実行する時期をずらす必要がある。一般的には、差別化を行った後にコスト・リーダーシップの戦略を実行するのがセオリーとなるが、短期間に戦略が切り替わると社員を混乱させることにもなりかねない。

どのような優位性を獲得するのかと、誰をターゲットとするのかを考えると、戦略は以下の4つに分類できる。

戦略の有利性
特異性低コスト
ターゲット業界全体差別化コストのリーダーシップ
特定のセグメント差別化×集中コスト×集中
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