戦略の立て方

「戦略とは」のページの中で、戦略の基本構造である「診断」「基本方針」「行動」を紹介したが、ここでは以下の5つに要素を分解して詳細をみていく。

この5つのプロセスは経営トップだけが行うものではなく、各組織階層で行われる必要がある。多くの企業は経営のトップだけ、あるいはひとつの組織階層だけがこれを行い、その結果、目的や目標を達成するための行動が行われず戦略は自然消滅するのである。理想的には組織階層の上から下へ伝わっていく「トップダウン方式」が良いが、これに固執する必要はない。現場から管理者、経営者へ伝える「ボトムアップ方式」でもまったく問題はない。現場にいるからこそみえるものもある。重要なのは組織全体がひとつの目標に向かって行動することである。

現状を把握する

社会の中で、自分の企業や事業あるいは競合他社は誰に何を提供しているのか、どのようなシステムや方法で業務が行われているのか、経営資源はどれくらいあるのかなど現在の状況の確認である。「自分の会社のことぐらい調べなくても知っている」と思った人も多くいるかもしれないが、自分が知っている(と思い込んでいる)ことと実際に行われていることが異なっていることは多々ある。これは競合する他社を認識するときにも当てはまる。多くの人はこの現状の把握と次の分析のプロセスを行わずに方針を決めて失敗する。

分析する

分析の基本は比べることである。コスト・リーダーシップ、差別化、経営資源、どれも他社との比較であるし、財務分析にしても標準的な数値との比較である。「現状を把握する」で得られた情報を比べ他社との位置関係を明らかにすることで、初めて戦略のスタート地点が見えるのである。

短期的な戦略の場合は自分の組織がどのように行動するかだけを考えればよいわけだが、長期的になると外部環境の変化も考慮しなければならない。現時点において優位性が得られる戦略だとしても、数年後の状況においても優位性が得られるとは限らないからである。平たくいえば未来を予測することが必要になるわけだが、これにはその分野の歴史から流れを予測したり、他業種の過去の事例と比べたりすることで確率を高める方法がとられる。

戦略論の多くはこの分析に比重が置かれることが多い。なぜなら分析することでこれ以降の方針・目標・行動はある程度決まってくるからである。現状を把握し分析することは問題を定義することと同義なのである。

問題がわからないのに答えを探そうとするのは、真っ暗闇の中で探しものをするのに似ている。手探りで偶然見つかることもあるかもしれないが、あちこちにぶつかって怪我をしたり、足元の穴に気づかずに落ちてしまったり、何年かけても見つからないといったリスクがつきまとう。これらは明かりを灯すだけで回避できる。周りに何があるのか、自分はどこにいるのかを把握できるだけで効率は劇的に改善される。

方針を決定する

分析によってある程度、方向性の選択肢は絞られてくる。企業の場合は経営のトップに近いほど、方針を決めることは社会の中での目指すべきポジションを決めることと同じとなる。これを意識している場合もあるし、結果的にそうなる場合もある。

もし経営資源が無限にあるならば、すべての方向にあらゆる経営資源を好きなだけ投入できるので方針など必要はない。方針というのは経営資源を集中させ、組織全体が同じ方向に向かって、戦略を効率的かつ効果的に行うために存在する。方針を決めることは、何をするのかを決めると同時に何をしないのかを決めることでもある。

目標を設定する

目標には売り上げや利益率などの結果として目標と、いつまでにそれを達成するのかという時間的な目標がある。これらを設定することは、行動計画を立てるときの指標となる。

簡単に達成できる目標を設定すれば能力を制御してしまい実力以上のものが発揮されず、人も企業も成長しない。逆に実現不可能な目標を設定するとモチベーションの低下や自信喪失などを招いてしまう。現状では難しいが将来的には可能かもしれないといった、背伸びをした目標を設定するのが望ましい。

行動計画を立てる

行動計画は組織階層によって内容は異なってくるが、基本的にはトップに近いほど大枠で捉え、末端に近いほどより具体的なものとなる。目標を達成するために「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「どうやって」「なぜ」行うのかを検討し決定する。

循環するプロセス

現実的には、5つのプロセスが順番にひとつひとつ行われることはまれである。方針や目標が先にあることも少なくないし、仮の方針があることによって収集する情報が選択されることもある。また、情報を収集するために行動が伴うことも多く、そのための計画が必要になったりもする。

これらのプロセスは循環しており、始まりや終わりといったものが存在しない。厳密にこのプロセスを実行しようとすると、現状を把握するためにはデータが必要になり、データを収集するためには計画が必要になり、計画を作成するためにどのようなデータをどれだけ集めればよいのかという方針と目標が必要になり、方針と目標を決めるために分析が必要になり、分析するためにデータが必要になる、という循環に陥ることになる。また、これらのプロセスは不規則な循環を行うこともある。

この中に「行動」や「情報収集」を入れなかったのは、どのプロセスでも行動が伴い、その行動によって情報が得られること、その行動がどのプロセスに基づいたものなのかを区分できないなどの理由による。

このような循環するプロセスは、経営戦略論において度々現れるため、覚えておくと経営戦略論を別の視点で見ることができる。

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