マネジメントとは

マネジメントという言葉はしばしば「管理」と訳されることがあるが、経営学の多くの書籍においてはマネジメントを管理とは区別している。

管理という言葉は「特定の基準から外れないように現状を維持する」という意味合いが強い。ネットで調べてみると、管理という言葉に「発展」も含まれているという記述もあるが、実際にはそのように認識している人は少ない。そもそも「マネジメントとは何か?」の説明に管理という言葉が出てくることが多いので「マネジメント=管理」というのはありえない。

一方、マネジメントという言葉の定義は曖昧で人によって大きく異なることもある。マネジメントというとドラッカーを思い浮かべる人も多いと思うが、ドラッカー自身も自著(ドラッカー名著集14 マネジメント[上]―課題、責任、実践)の中で「マネジメントという言葉は難しい言葉である。完全なアメリカ英語であって、イギリス英語を含めいかなる外国語にも翻訳できない。」と述べている。

いろいろと文献をあたってみたが、たったひとつの答えというのは存在しないようである。それどころか「マネジメントとは何か」よりも「マネジメントとはどうあるべきか」が論じられることの方が多い。つまり、マネジメントに対する認識は人によって異なっていることが分かる。

このサイトにおいても「これはマネジメントで、これはマネジメントではない」という個別に分類することはあまり重要な意味を持たないし、重要だとも考えていない。しかし、これではどこか釈然としないと思うので、マネジメントを広い意味で定義してみたい。

マネジメントの広義

組織の中でマネジメントを行う人をマネジャーと呼ぶことがあるが、これは企業に限らず、例えばクラブ活動でも選手とは別にマネジャーという存在がいるし、芸能人などのスケジュール管理を行う人もマネジャーと呼ばれる。一般的にクラブ活動のマネジャーは選手として競技に出ることはないし、芸能人のマネジャーも自分で芸能活動を行うことはない。企業においても従業員の日常業務、例えば製造業で工作機械を操作する業務やスーパーマーケットやコンビニでのレジ打ち業務などはマネジメントと呼ばれることはない。これと合わせて、多くの文献に共通する部分と、マネジメントという言葉で多くの人がイメージするものは「間接的な活動」である。従って、マネジメントとは「組織に貢献する間接的活動」であるといえる。これでは説明が不十分なので、少し解説したい。

まず「組織に貢献する」とは、その組織の目的や使命に則っていることであり、それらから外れていればマネジメントとは呼べない。そして「間接的活動」とは、間接部門の業務ではなく、その組織内の日常業務を効率的・効果的に行うための活動である。

間接的活動を別の言葉で表現すれば「主な活動の補助」である。主な活動とは、製造であれば製品を作ることや材料や部品などを手配すること、営業であれば顧客に製品を紹介したり交渉するなど、直接価値や利益を生み出す活動である。これらの主な活動を補い・支える活動の中で組織に貢献するものがマネジメントとなる。

では、経理や人事の仕事はすべてマネジメントなのかというと、これは視点や内容によって異なる。経理部門や人事部門の従業員からすれば経理や人事といった活動は日常業務であり、企業にとって本業と切り離すことができない付随業務であるため間接的活動ではない。しかし、製造部門からすれば間接的活動であることもある。それは製造部門の日常業務を効率的・効果的に行うための活動なのかどうかによるのである。つまり、マネジメントなのかどうかは活動内容や組織に貢献するのかどうかだけではなく、会社全体という大きな組織で見るのか、部門別や職能別といった小さな組織で見るのかという視点の違いによって変わってくるのである。おそらくこれが、マネジメントという言葉を複雑にしている原因だと考えられる。

このサイトでは、マネジメントの広義として「組織に貢献し、主な活動を効率的・効果的に行うための間接的活動」を用いる。

各組織階層のマネジメント

ほぼすべての企業は組織化されているので、あらゆる組織階層でマネジメントは必要になる。社長は会社全体をマネジメントし、部長や課長などのグループ長は各部門や部署を、そして個々人は自分自身をマネジメントしなければならない。それは業務の管理だけではなく、身体的・精神的健康の維持、スキルの向上や外部環境とのコミュニケーション、情報交換といった幅広い内容が含まれる。さらにそれらが企業の目的や使命に合致しているかどうかがもっとも重要である。各グループやその人員が異なる目的を持って働いていたのでは、組織として成り立たない。※厳密には、目的が違っていても行動が同質であれば(目的に沿っていれば)組織は成り立つ。

これまで「目的や使命」という言葉を使ってきたが、経営者などが行うトップマネジメントとしてまず行うべきことは「何をする企業なのか」という企業の存在意義を決めることである。これは「ミッション」と呼ばれ、その企業の目的や使命という意味合いを持っている。

あらゆる意思決定において何らかの基準や方向性が必要となるわけだが、その判断基準のひとつとなるものが「理念」「ミッション」「ビジョン」「方針・指針」と呼ばれるものである。これらから各組織階層でのより具体的な方向性である「戦略」が決定される。戦略は大きく分けると上の階層から「企業戦略」「事業戦略」「製品戦略」などがある。

ただし、これらはある程度大きな組織を前提としたものであり、小さな組織の場合は経営者と従業員の距離が近いため、明文化しなくても伝わるものである。経営者の行動と明文化したものが異なっていれば、従業員が混乱するおそれもあるため、小さな組織の場合はない方がよい場合もある。

理念

理念とは「ものごとはこうあるべきだ」という根本的な考え方である。個人での信念のようなものであり、それを組織などの集団で共有するものである。ミッションを遂行していく中での様々な意思決定の判断基準ともなり、組織文化に影響を与える要因のひとつともなる重要なものといえる。

理念は「企業理念」や「経営理念」と呼ばれることもあるが、これらを明確に分けて使っている企業は少ないし定義も曖昧である。言葉から推測できるイメージとしては、企業理念は企業全体に及ぶものであり、経営理念は経営者だけのものという解釈ができる。理念は経営者だけではなく、そこで働く従業員も共有すべきものであると私は考えているので、「理念」あるいは「企業理念」とするのが望ましいと考えられる。もちろんその他に経営者だけで共有する経営理念があっても良いと思う。

企業によっては「方針」や「指針」といった言葉を用いている場合もあり、「企業方針」や「行動指針」といったものがそれである。

このサイトでは理念を、ミッションやビジョン、方針や指針といったものの上位概念として捉えている。なぜなら、理念は経営者の信念に大きく影響しており、極端に言えば経営者の信念そのものであるともいえる。これは企業が設立される、あるいはその企業の経営者となる以前からでき上がっているものであり、その信念を土台としてミッションやビジョンが決定されると考えるのが自然だからである。

ミッション

ミッションは上で記述した通り「何をする会社なのか」を定義するものであるが、あまりにも具体的に考えてしまうと企業活動が狭い範囲でしか行えなくなったり、新しいことをしようとする度にミッションを追加・修正しなければならなくなるので、抽象的に捉える必要がある。ただし「顧客に価値を提供する」といったどの企業にも当てはまるようなものにしてしまうと、ミッションを定義する意味がなくなってしまう。適度に抽象的で適度に具象的であるものが望ましい。

一般的にミッションの中には「誰に対して何を提供する」といった内容が含まれているものが多い。例えば日本マイクロソフトの企業ミッションは「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すための支援をすること」となっている(同社サイトより)。「誰に対して」には限定していないが、「何を提供する」については「ビジネスの持つ可能性」と適度に具体性を持っている。

ビジョン

ビジョンとは「企業の将来のあるべき姿」であり、どのような企業にしたいのかという経営者の願望や目標とする将来の姿である。それは売上や利益率といった数値目標ではなく、社会の中での企業の位置づけや事業構造などである。

ビジョンとミッションは混同されがちであるが、ミッションは今すべき行動であり、ビジョンはその行動の先にどんな未来を描いているのかである。つまり、ミッションの延長線上にある目標がビジョンとなる。

戦略

戦略については「戦略とは」のページで詳しく解説するが、言葉通りに解釈すれば「戦いの概略」である。英語では「ストラテジー(strategy)」となるので、必ずしもこれが当てはまるわけではないが、意味としては本質をついていると思う。戦いの先にある目標を達成するための方法を記述するものである。

ミッションやビジョンの策定も広い意味では戦略と言えるのかもしれないが、このサイトでは戦略をミッションやビジョンの下位概念として捉えている。ミッションの内容に沿っており、ミッションよりも具体性を伴う必要がある。

戦略は組織階層によって名前がつけられていることもある。企業全体の戦略は企業戦略や全社戦略と呼ばれ、事業単位の戦略は事業戦略あるいは競争戦略と呼ばれることもある。さらに製品単位の戦略は製品戦略と呼ばれる。

また、組織の機能ごとに分類して行なう機能別戦略もあり、マーケティング戦略や人事戦略、財務戦略などがある。

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